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お仏壇やお墓参りの場でお線香に火をつけるとき「お線香の火は、ライターから直接つけないほうがいい」と聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。 しかし、実際のところ「なぜ直接火をつけることが良くないのか」の理由をきちんと説明できる方は少ないかもしれません。
今回のコラムでは、お線香に火をつけるときにライターが避けられる理由をふたつの視点からご紹介します。
著者|

京王メモリアル 葬祭ディレクター
仏教では、仏前に灯すろうそくの火は単なる火ではなく、不浄を祓ってその場を清めるという意味が込められています。
また、仏さまの智慧や光明を象徴するものとされており、その火を使ってお線香に火を移す行為は、仏さまの教えを「いただく」という意味合いを持っています。
仏さまの智慧や光明とは、困難な状況をやさしく照らしてくれる“心の灯り”のようなものです。
こと葬儀の場において考えるのであれば、それはまさに「故人の歩んできた道を尊重しつつ、ご遺族の心の安寧を願う」という姿勢として現れます。故人の人生の意味を静かに見つめ、ご遺族が今後の生活を少しずつ取り戻せるよう、配慮ある言葉や行動を選ぶことにつながります。

一方、ライターは日常生活の道具です。
便利で実用的ではありますが、仏前という場では少し俗世的な印象を与えてしまうため、略式と考えられてきました。
ライターで直接お線香に火を灯すと、どうしてもろうそくから火を移した際に比べて炎が大きく、強いものになってしまいます。それを落ち着かせるため、大きく手を振る、お線香を揺らすなどの行為が必要になってきます。そうした派手さを伴う動きは、厳かな仏前には相応しくない、と考える人がまだまだ多くいるのも事実です。
「ろうそくの火をお線香へ…」という一手間は、仏さまや故人への敬意を形にした作法とも言えるのです。

葬儀や法要の場では、静かで落ち着いた厳かな雰囲気が大切にされます。
ろうそくの火に心を向け、その火をそっと静かにお線香に移す。そのゆっくりと穏やかな所作は、まさに厳かな雰囲気そのものです。
対してライターから直接お線香に火をつける動作は、着火時の金属音や一瞬の強い炎によりあっという間にお線香に火がつきます。それは、厳かな場の雰囲気から少し浮いてしまうこともあります。
| お線香に使う道具が与える心理的変化 | |
|---|---|
| ろうそく | ライター |
| 炎にあたたかみがある | 炎を強く感じる |
| 厳かな雰囲気 | 金属音が気になる |
| 時間をかけてゆっくりと | あっという間に火がつく |

しかし近年では、利便性や安全性を考えライターから直接お線香に火をつけられる方も多いのではないでしょうか。
例えば、屋外では、風の影響を受けにくい防風ライターを使用することで素早く安全にお線香に火がつけられます。
また、ライターから直接火をつけることで、お参り後のろうそくの火の消し忘れや、燭台の転倒による火災のリスクを避けることができます。
このように、ライターは現代の生活環境に即したお参り道具として受け入れられてきています。

お参りの作法は、心を縛るものではありません。
状況や安全面を考え、ライターを使う選択も、もちろん尊重されるべきものです。
ただ、もし時間や環境に余裕があるときには、ろうそくの火からお線香に火を移してみてください。
そのわずかな時間が、故人を想い、自分の心と向き合う大切なひとときになるかもしれません。
意味を知ったうえで選ぶ。
それが、これからのお参りのあり方なのではないでしょうか。
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