【公式】~お坊さん監修~なぜ葬儀を行う必要があるの?八王子市の地域性と葬儀の本来の役割とは -京王メモリアル

僧侶に転身して20年の間に沢山の方をお見送りしてきました。

一般在家から僧侶へ、私だからこそ感じた仏教の疑問や、何故葬儀を行うのか、私なりに考え、感じたことを実例としてお話しさせて頂きたいと思います。

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京王メモリアル 葬祭ディレクター

  • 厚生労働省認定葬祭ディレクター
  • 業界歴20年以上
  • 調布・八王子・多摩エリアで年間550件以上の施行
  • 公営斎場の運用・アクセスに精通
  • 市民葬/家族葬/直葬 など幅広く対応

葬儀の持つ「二つの意味」について

仏教の「葬儀」という儀式が本来持つ二面性について、私が喪主様によく話すことをお話したいと思います。

先ず第一に葬儀というのは「故人の為の葬儀」です。

本来葬儀とは故人をお釈迦様の元・ご先祖様の元に送り届ける式なのです。大日如来の力を信じる事でも、阿弥陀如来の慈悲の力を借りる事でも同じなのです。お釈迦様の元でご修行して頂く為にこの世との線引きを行っているのです。

「引導を渡す」ってありますよね?この「引導」は葬儀の時に導師が唱える導きの言葉で仏教用語なのです。

他方、こちらは「生きている私たちの為の葬儀」です。

これはどんな宗教、宗旨・宗派でも同じです。故人に対しての最後の感謝の思いを伝える場であり、それがセレモニーとなって形に表れるのです。だから最後に「ありがとう、ご苦労様」と言って送り出すのです。そして葬儀の後には晴々とした寂しさが残るのです。

ですから葬儀というのは、大切な人を送る為にも自分の最期をどのように迎えるかを考える事も、避けては通れない大事なセレモニーなのです。

葬儀の二面性
故人のための葬儀生きている私たちのための葬儀

八王子市で悔いを残さない葬儀のために

葬儀を経験された方は、おそらく、大部分の方が何らかの後悔が残っていると思います。

次は後悔の無い葬儀をしたい。こんな事は出来るのか?新しい技術はどういうものがあるのか?

自分らしい葬儀をする為に色々と考えていらっしゃると思います。趣味に志向を凝らしたり、残された方の迷惑にならないように全て自分で決めようと考えている方もいらっしゃると思います。

もちろん、生前に後悔しないようにと考えられている事はとても重要です。しかし、一から十まで全て自分の意思を通した葬儀を考えている方は、もう一度考え直してください。
それは先程話し致しました、生きている側の人間の感謝の場所を残してあげることが重要なのです。自分が良くても残された家族が困ってしまう事もあります。

ですから、「これとこれは俺の意思を通してくれ。後は自由に!」というくらいが丁度良いのです。大まかな決定を自分がして、余白を残す事でバランスの取れた良い葬儀が実現出来るのです。

もちろん宗教儀礼ですので、行事規範に則り儀式を進める必要はあります。

その中で思いを託すのが残されたご家族、あるいはご友人であり、形にするのが葬儀社さんなのです。可能ならば事前にご相談にお越し頂き、最新技術や希望など聞いて下さい。必ず良い答えが見えてくるはずです。

また以前葬儀を行って、もし後悔が残っている方は、その不満点をしっかりお伝え下さい。その上で次へ活かしましょう。ただ一つとして同じご葬儀はありません。過去から学ぶことによって、現在、未来へ繋げましょう。

葬送文化の実例と変遷

昔の風景「葬列(野辺送り)」とは?

以前、葬儀には葬列というものがありました。葬儀式のあとに故人の棺をお寺の前庭に出し、列を組んだ親族などが棺の周りを右周りに三度回ってから墓地へと運ぶ「野辺送り」とも言われたものです。

地域によっても違いますが、この中で喪主は位牌を持ち、親族がそれぞれのお役の道具、例えばお膳や花などを持って続き、沢山の人が後へと続き、列を組み墓地へと進みます。埋葬地へ至り、そこで導師より引導を授かり、そののちに埋葬する大切な儀式へ向かう為の列です。

現在の葬儀の中では少なくはなりましたが、実際に道具を持って葬列を組んでお寺の外の庭を三周する風習がある地方もあります。

時代は車の時代になり、霊柩車が葬列の代わりをするようになりました。宮型の霊柩車は輿(こし)といわれるものを載せていますが、これは葬列のときに故人を運んだ輿という道具からきていると言われています。

今一例を挙げましたが、葬儀という儀式はわからないものが多くありますが、実はその一つ一つの儀式作法や道具に意味が込められているのです。

これを知っていて行うのと、知らずに葬儀を終えてしまうのでは全く意味が違います。ですから、葬儀費用や流行りの葬送を知りたいという気持ちもわかりますが、なるべく本来の意味を知るということから始める事が重要なことであると思います。

儀式の中にある、自由な「自己表現」

逆に儀式以外のものはある程度自由が利くのではないでしょうか?

例えば、会葬礼状ありますよね。申し訳ありませんが、お決まりの文章が印刷されたもので、なんとなく味気ない気がしませんか?

会葬礼状も生前に自分自身が手書きで書いてみるのも良いかもしれません。気持ちを込めて一言一言ゆっくり書いてみる。字の上手い下手は関係ありません。
あるいは喪主の立場として、喪主の方やそのご家族が集まって故人に対しての寄せ書きのような会葬礼状も良いかもしれません。これは気持ちのこもった「自己表現」であると思います。

絵の得意な人は遺影の代わりに自画像のデッサンもよいかもしれません。私はまだそんな遺影にお会いしたことはありませんが、自画像は自己表現の極みだと思います。

葬儀で「自己表現」の一例生前に手書きでご自身の会葬礼状を書いてみる
喪主として、親族寄せ書きのような礼状を作成
イラストやデッサンなどの自画像を遺影代わりに

このように葬儀というものは、一人の人間の究極の「自己表現」、「人生の縮図」なのです。ただし、他の自己表現と最大に違うのは、「主役がその場にいない」のです。亡くなった人の自己表現を託されるのは残された家族です。

ですから、自分の葬儀式のことはもちろん、喪主という立場になって場合も、今お話しした部分を重点に考えて、亡くなった人の百種百様の命をいかに受け継ぐか、それをお考え下さればと思います。

人は何故、葬儀を行うのか

では、人は何故葬儀をするのでしょうか?寂しいから?見栄?それとも死者への供養?どれもあっているし、どれも当てはまりません。何故?それは、先程お話しした百種百様の想いがあり、葬儀を執り行うからです。正解はありません。

ただ単に火葬にするだけで良いものを時間と労力をかけてセレモニーを行う、古来から人を弔う為に行われてきた「葬送儀礼」の持つ意味について私なりに考えてみました。

葬送儀礼」の持つ意味

人の死という誰しもが経験するが誰もその先のことはわからない、ある種の人知を超えた状況に置かれた際に、故人に対してどのような事を施してあげれば残された者の救いを得られるか?愛する人との別れに対してどのような事をしてあげれば自分たちの想いを納得する事ができるのか?

冒頭お伝えした仏教の持つ葬儀の二面性を考えたときに、勿論宗教の役割は大きく、故人様に対しては安心してその先へ進むよう諭して道を作ってあげる事であると考えます。

そして、残された家族に対しては

「きちんと人の【死】というものにカタチを与え、旅立ちをスムーズにすること。愛するものを失い、不安に揺れ動く遺族の心にカタチを与えて動揺を抑え、悲しみを癒す事。」

これこそが「人は何故葬儀をするのか?」という疑問に対する答えの一つであると私は考えます。

一般家庭より僧侶になった私がこの20年間、葬儀を行う前に遺族・ご家族にお願いすることがたった一つだけあります。それは「全ての葬儀式が終わった後に、亡くなった故人様らしいお葬式だったね。そう思えるようにこの葬儀式を迎えて下さい」とお伝えしています。

きちんと自分自身の気持ちを整理する。
お別れという「カタチ」付ける。
これが葬儀式にできる事だと考えています。

八王子市で生前に私達ができること

「生きる」ことにこだわる

ここまでお話してきて、葬儀の意味や大切さを少しご理解頂けたと思います。

自分の大切な最後の式をどのように迎えるか?大切なご家族にどのような感謝を伝えるか?もしもの時の為に生前にご相談をされる事が良いと思います。生前に葬儀社や宗教者に思いをしっかりとお話頂くことが重要かと思います。出来ればお一人でなく、ご家族のどなたかとご一緒にご相談されてください。

生前相談とは、終わりを決めて死に向かって進むことが目的ではありません。納得したセレモニーの枠組みを作る為にご相談される事です。だからこそ私は敢えて「生きている事にこだわって下さい」と伝えたいと思います。

生きている人は最後までその輝きで大切な人を支えて下さい、照らしてください。その灯りは残された人の迷いの中に道を照らし出してくれます。命がある事に感謝し続けて下さい、誇りを持って下さい。それは自分自身に命を与えてくれた両親やご先祖様に感謝することなのです。それが「生きる」という事なのです。

今回、お話した事が、皆様の最後のセレモニーの一助となれば幸いでございます。

是非、葬儀について一度お考えいただきご相談下さい。

監修者|

曹洞宗 天神山 常泉寺住職
安見 道壽
安見 道壽

資格・経歴
曹洞宗 常月山 香林寺 主任
株式会社オービック入社後、僧侶へ転身
大本山總持寺 安居(修行)を経験
現在は長野・東京の二拠点で寺院運営を行う
PROFILE
講演活動やクラウドファンディングなど幅広く活躍し、仏事・葬儀の信頼性ある知識を発信している。

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