【公式】納棺師の想い—納棺と湯灌— 「最後のケア」と「別れの設計」-京王メモリアル

納棺師として十余年、様々な方のお見送りをしてまいりました。
その経験と私なりに感じた想いをお話しさせていただきます。

突然のお別れの前では、気持ちの整理ができないまま決めることが続きます。
そんなとき、納棺や湯灌はただの作業ではなく、故人を大切に整え、家族が「きちんと送れた」と思える時間になり得ます。

納棺や湯灌は、まとめて言えば「最後のケア」であり、「別れの時間をどう作るか(=別れの設計)」でもあります。
納棺師としての目線で、いくつか項目に分けてご説明させていただきます。

また、コラムの中に出てきます耳なじみのない単語に関して、こちらのコラムで解説しております。
よろしければ、併せてごらんくださいませ。

目次

著者|

京王メモリアル 葬祭ディレクター

  • 厚生労働省認定葬祭ディレクター
  • 業界歴20年以上
  • 調布・八王子・多摩エリアで年間550件以上の施行
  • 公営斎場の運用・アクセスに精通
  • 市民葬/家族葬/直葬 など幅広く対応

納棺とは

旅立ちの支度であり、触れられる最後の時間

納棺は、故人様のお身体を整え、棺に納める一連の儀式です。
「旅立ちの支度」と表現されることもあります。

ただ、ご遺族様にとって大きいのは、意味付けだけではありません。
納棺は、故人様に手を添えられる最後の機会になりやすいのです。

  • 手を拭く
  • 髪を整える
  • 服を着せる(または襟を整える)
  • お顔まわりを整える
  • そっと手を握る

ほんの小さな関わりでも、「お別れが現実になった」と心が追いつくきっかけになります。
泣いてしまっても、言葉が出なくても、それで十分です。

納棺が持つ三つの意味

宗教・心・実務

1)儀礼としての意味:「区切り」をつくる

地域や宗派で形はさまざまですが、納棺には共通して「区切り」をつくる力があります。
人生の終わりに、整えて見送る。
その流れがあるだけで、ご遺族様の気持ちは少し落ち着きを取り戻されるように感じます。

2)心の意味:別れを受け止める入口

お別れは頭では分かっていても、気持ちが追いつきません。
納棺で故人様に触れたり、表情を整えたりする時間は、心の整理の入口になることがあります。

3)実務の意味:尊厳を守り、安全に見送る

納棺の前後には、湯灌や清拭、お着替え、整容などが行われることが多いです。
これは見た目のためだけでなく、尊厳を守り、安らかに送り出すためのケアでもあります。

副葬品(棺に入れるもの)について
火葬の都合で、入れない方がよいものがあります。
入れられない場合も、写真にする・棺の上に添えるなど、代わりの方法が選べることがあります。
迷ったら遠慮なくスタッフに確認してください。

湯灌とは

清めと整えで「ありがとう」を形にする時間

湯灌は、納棺の前にぬるま湯などでお身体を清め、整える儀式です。
宗派や地域、葬儀社の方法で形は異なり、必ず行うものではありません。

それでも湯灌が選ばれるのは、「感謝」と「尊厳」を目に見える形にできるからです。

湯灌は清拭を中心にした形が主流でしたが、近年は実際にお湯を使ったお風呂のような方法もあり、状況に合わせたやり方があります。
大切なのは「やる/やらない」より、家族の気持ちと状況に合う形を選ぶことです。

湯灌が支えてくれること:象徴と実用の両面
象徴としてこの世のお疲れを洗い流し、清らかなお姿で送り出す
実用として衛生を保ち、整容や納棺を進めやすくする
心の面として丁寧にケアすることで、ご遺族様の後悔が減りやすい

きれいにしてあげられてよかった
この一言が、残された人の心を支えることもあります。

納棺師として

ありがとう』につながる納棺式を

納棺や湯灌を“別れの設計”として考えたとき、やってよかったと言っていただける現場には共通点があります。

1)技術より先に「合意づくり」:何を大切に送りたいか

湯灌は必須ではありません。
だからこそ最初に、ご遺族様の希望を短い言葉で整理します。

たとえば、こんな軸です。

故人らしさ

普段の服がいい/宗教作法を大切にしたい 等

立ち会い

触れたい/見守りたい/難しい

時間と費用

できる範囲で無理なく

安置状況

体調変化への配慮が必要か

ポイントは、急がせないこと。
「選べた」という感覚は、後悔の予防になります。

2)「故人らしさ」を取り戻す:旅支度を「その人仕様」に

納棺は、きれいに整えるだけではありません。
その人らしさを、もう一度そこに置く時間でもあります。

服装

白装束だけでなく、愛用の服という選択も

髪型

いつもの分け目、前髪の位置

メイク

控えめに、など希望に合わせる

小物

控えめに、など希望に合わせる

できる範囲で、その人に寄せる
これだけでも、お別れの納得感は大きく変わると思います。

3)ご遺族様の参加は「強制しない」:選べる安心

触れたい人もいれば、怖さやショックが強い人もいます。
正解は一つではありません。

だからこそ、参加は段階をつくります。

  • そばにいるだけ
  • 手を拭く
  • 髪を整える
  • 口紅だけ差す
  • 手紙を添える

できる人が、できる分だけ
それが一番やさしい設計です。

4)所作と場づくり:静けさ・尊厳・見通しが不安を減らす

納棺や湯灌は、音や視線、動き方ひとつで印象が変わります。
だからこそ、安心できる場づくりが重要です。

  • 寄り添うような声色で、説明は短く
  • 布掛けや姿勢への配慮で尊厳を守る
  • 「次に何をするか」「何分くらいか」を区切って伝える

見通しが立つだけで、ご遺族様の緊張は少し緩んでいただけます。
安心感もまた、立派なケアだと考えます

5)最後の一言を急がない:「言葉が出てくる余白」を守る

蓋を閉じる直前。
ここで大事だと思っているのは、何かを言わせることではありません。

言葉が出るまで待てる“余白”をつくること。

  • 数秒~数十秒、静かに待つ
  • 合掌のタイミングを急がせない
  • 手紙や写真を入れる時間を確保する

その余白があると、「ありがとう」「お疲れさま」など、自然な言葉が自然にこぼれることがあります。

心に残る納棺式の条件

「尊厳×選択×余白」

納棺は旅立ちの支度であり、遺族にとっては最後に触れ合える時間になり得ます。
湯灌は清めと整えを通じて、象徴的にも実用的にも、遺族の心を支える時間になり得ます。

心に残る納棺式とは技術の披露ではなく、ご遺族様が納得して選び、故人らしさを感じ、静かに別れられる場を整えること。

尊厳が守られ、選択肢があり、余白がある。
そのとき自然に出てくるのが、「ありがとう」なのだと思います。
そして、私が目指す納棺師とは、自然な「ありがとう」を最大限引き出せる人、と思っています。

私自身の誓いと共に、これを見ていただいた方々に「悔いのないお見送り」をしていただける一助となれば幸いです。

是非一度お考えいただき、ご相談ください。

監修者|

納棺師

PROFILE
京王メモリアル提携納棺師。
幅広い地域にてご活躍されております。

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